この記事のポイント
- 溜まり水 生物多様性
- スタグナントウォーター 生態系
- 溜まり水 有益 微生物
- 溜池 汚染 対策
- 都市部 自然再生
1. 溜まり水(Stagnant Water)とは?
“溜まり水”とは、雨水や地下水が地形の凹地や人工的な窪みに長期間滞留している水溜り・小規模池のこと。
- 例:田んぼのあぜ道、放置されたプランターの底、道路の側溝、水たまり型公園の水盤など
- 特徴:流れがないため水温・酸素濃度の変動が大きく、固形物や有機物が堆積しやすい
溜まり水は「汚れていて危険」というイメージがありますが、実は多様な生物が暮らすミニ生態系としての側面も持っています。
2. 溜まり水に棲む主な生物たち
溜まり水の環境条件(低酸素・高有機物量)を好む種から、流れのない静水環境を利用する種まで、幅広い生物が観察できます。
- 微生物(バクテリア・シアノバクテリア)
- 有機物の分解や窒素固定を担い、水質浄化に寄与
- プランクトン(植物プランクトン・動物プランクトン)
- シアノバクテリアや緑藻類が光合成を行い、微細な動物プランクトンがそれを捕食
- 水生昆虫の幼虫
- ヤゴ(トンボ類)、カゲロウ、シマゲンゴロウなどが発育
- 両生類(オタマジャクシ〜成体)
- カエル類の繁殖地として利用。卵からオタマジャクシ、成体へと遷移
- 小型魚類・甲殻類
- メダカ、タナゴ、ドブガイなどが定着(都市部では放流によるものも)
これらの生物は自然の食物連鎖や物質循環を小規模ながら支え、周囲の陸域生態系にも波及効果をもたらします。
3. 溜まり水の持つメリットとリスク
メリット
- 生物多様性の拠点
小さな水域でも、多数の種が集まる“ホットスポット”になることがある。 - 都市のヒートアイランド緩和
水面蒸発による気温低下効果。公園や街路樹の潤いを感じやすくなる。 - 水質浄化機能
微生物や水生植物が有機物を分解・吸収し、周辺環境を浄化。
リスク
- 水質悪化・腐敗臭
有機物過多で硫化水素など悪臭ガスが発生。 - 病原体の繁殖
大腸菌群やレプトスピラ、希にNaegleria fowleri(脳食いアメーバ)などが増殖。 - 蚊の発生源
アカイエカなど病気媒介蚊の産卵地になる可能性。 - 藻類の過剰繁茂(ブルーム)
光合成細菌やシアノバクテリアの大量増殖で水色が変化し、酸欠や魚類大量死を招く。
4. 溜まり水を健全に保つための対策
4-1. 定期的な水交換・撹拌
- 流入・排水の確保
小さなプールやタンクは毎月1回以上の水交換を実施。 - 撹拌ポンプの設置
水深が深い場合はポンプで軽く撹拌し、酸素を供給する。
4-2. 水生植物の導入
- 浮葉植物(ホテイアオイ、スイレン)
葉が直射日光を遮り、水温上昇と藻の増殖を抑制。 - 沈水植物(アナカリス、マツモ)
光合成で酸素を供給すると同時に、余剰栄養塩を吸収。
4-3. 微生物・バクテリア剤の活用
- バイオフィルター資材
セラミックや特殊フィルターに好気性バクテリアを固定化し、分解力を強化。 - 市販バクテリア剤
有機物分解を助けるボトル剤を規定量添加。
4-4. 物理的掃除と遮光
- 堆積物の除去
底に溜まった落葉や泥を定期的に掻き出す。 - 遮光シート・日陰の確保
強い日差しを遮ることで藻類ブルームを予防。
4-5. 蚊対策
- 感冒剤の投入(BTI剤など)
蚊幼虫だけを選択的に駆除し、他生物への影響を最小化。 - メダカや金魚の放流
幼虫を捕食する小魚を導入。
5. 都市部での自然再生とコミュニティ活動

- シビック・エコロジー
市民が溜まり水の生態観察会を主催し、地域の自然資源として活用。 - 緑のインフラ整備
雨水貯留施設を溜まり水として活用し、洪水対策+生物多様性の両立を図る。 - 学校教育との連携
小中学校の理科授業で「溜まり水ビオトープ」を設置し、観察・記録活動を実施。
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7. まとめ
溜まり水は“放置された汚水”というイメージだけでなく、小さな自然の実験場・生態系の拠点としての可能性を秘めています。一方で、適切な管理を怠ると病原体や害虫の温床にもなり得ます。
今すぐできること:
- 水質チェックと掃除スケジュールを立てる
- 水生植物やメダカを導入してバランスを整える
- 地元のビオトープ活動に参加して知見を共有する
自然と共生しつつ、安全で美しい溜まり水環境を創りましょう!
大切な地域の“水辺”を、あなたの手で守り育ててください。
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