
筆者の住む街には誰もが知る名物菓子や、名物料理がいくつか存在する。
それは筆者が物心ついた時から慣れ親しんでいる味であり、たしかに名物と呼ぶにふさわしいソウルフードである。
しかしある時を境にして突如として現れた【疑わしき名物】が、ここ10年ほどで多数出現した。
その【疑わしき名物】は、ある時を境に駅の至る所に広告が貼られ、テレビやラジオ、雑誌などに度々取り上げられた。
筆者は生まれも育ちも同じ街であり、もう35年ほど過ごしている。なのにそれまで全く聞いたことのない商品だったので、「いつから我町の名物に?」と疑問に思い、同級生や職場の同僚に尋ねてみた。
しかし皆口を揃えて「最近知った」「食べたことがない」と言うばかりで、「あー!あれは確かに名物だね!」と、気持ちよく筆者の疑問を払拭してくれる人間には出会えなかった。
筆者も長年マーケティングを嗜んでいる人間なので勘ぐってしまうのだが、これは【造られた名物】なのではないだろうか。
疑うことは良くないことであるが、地元で30年以上暮らしてきた人間が誰も知らない名物なんて、それは本当に名物と言えるのだろうか。
しかしその商品は今ではもう連日行列必至の超人気商品となっている。
実はこういったマーケティングにより出来上がった人気商品は多数存在しており、何も全国各地の名物品に限った話ではない。
詳細な作品名は伏せるが、例えば某子供向け輸入アニメもそうで、内容は他の同カテゴリーのアニメと大差ないが、莫大なマーケティング費の投入により、日本での確固たる地位を築いた。
要するにマーケティングの力を持ってすれば、中身なんてほとんど関係ないのである。
金をかければかけるほど、中身の価値ではなく知名度に人は集まるようになる。
我町の【疑わしき名物】たちは街のアイコン的存在として他府県まで名前が知れ渡っているが、地元民たちのほとんどが「なぜ?」と首を傾げており、購入する人もあまり多くはない(むしろ非常にマイノリティ)。
その【疑わしき名物】たちを購入する人のほとんどは外から来た人間である。
筆者ら地元民にとっての本当の名物は、最早淘汰されていると言っても過言ではない状況で、正直言って戦況は芳しくない。
マーケティングを嗜む人間として、そして地元を愛する人間としての願いとしては、老舗、伝統的な商品を扱う方々は、どうかマーケティングの力を侮らずに、自分たちの素晴らしい商品の宣伝にもっと力を入れてみて下さい。
どんなに素晴らしい商品でも知ってもらえなければ、寂しいことですがいずれは潰えてしまうのです。
コメント