今回は珍しくNetflix作品のレビューというか、個人の感想を書くだけの記事となっております。
というのも妻と一緒にずっと楽しみにしていた【今際の国のアリス:シーズン3】が、個人的にだがあまりに残念だったからである…。
普段絶対にこういったネガティブな内容の記事は書かないように決めているのですが、なんだか海外版もありそうな雰囲気(イカゲームのパターン)で終わったので、もしも、もしもこの記事が巡り巡って制作陣やNetflixの関係者に届くことがあればと思い、映像作品好きの願いとしてここに残しておきたいと思った次第であります。
【重大なネタバレ有】今際の国のアリス:シーズン3のレビュー
ウサギが自分勝手すぎる
今回一番筆者が気になったというか腑に落ちなかったのは、ウサギが今際の国に戻る事になった理由と、そのあとの態度である。
ウサギは過去に父を亡くしており、別れ方にトラウマを抱えているらしく、夜な夜な父の悪夢に苛まれている。
そこに色々あって『死の世界に憧れを抱くリュウジ』が登場し、父に会えるかもとウサギを臨時体験に誘いだす。
ウサギは『父に会えるなら悪夢の中にでも身を置きたい』とリュウジのインタビューでも答えており、新婚ホヤホヤのアリスに何も告げずにリュウジの誘いにホイホイ乗ってしまうのである。
挙句の果てに一応臨死体験寸前にアリスに電話をかけ、アリスが出ると『アリス、ごめん…』とだけ言い残し電話をブチッ。
この時点で私と妻は、『とんでもねえなこの女… 何がごめんだオイ…』とかなりウサギに腹を立ててしまいました。
これ、残されたアリスの気持ちは一切考えてないですよね…。
妻からこんな不安になる電話もらって、アリスはどんなに恐ろしい気持ちを味わった事か…。どこにいるのかもわからない、何が起きてるのかもわからない、事件に巻き込まれたのか、それとも事故に遭ったのか、誘拐でもされてしまったのかと、おそらく色んな良くない事がアリスの頭をよぎった事でしょう。
で、結局この事がきっかけでウサギは今際の国へカムバックする事に。
ここで1つ疑問なのが、そもそもウサギは今際の国に行って何をしたかったのでしょう?
だって父はもう完全に亡くなっているので、そもそも今際の国にはいないはずだし(文字通り今際の国は今際の際に行く場所だから)、もし会えたとしてどうするのだろう。
本当の意味で父に会うためには、臨死体験ではなく完全に死の世界にいかねばならないはずですしね。
こんな意味不明な事のために、夫に何もつげずに(ごめんだけは言ってたが)ちょっと前に会ったばかりのリュウジにホイホイついていっちゃうなんて、どんだけこの子尻軽なんよ…(笑)
さらに今際の際でアリスと再会してからも、特にその事について詫びる素振りも無し。
『いったいなんなんだこの女!』
リュウジがメンヘラすぎる
賀来賢人さん演じるミステリアスなハンサムガイであるリュウジ。今回の今際の国のアリス:シーズン3の新キャラクターであり最重要人物である。
『本当の死の世界をみせてやる』と、前作で死の国の住人となったバンダにそそのかされ、ウサギを今際の国にカムバックさせた男である。
足が不自由で車椅子に乗っている大学の研究者で、死後の世界に非常に強い憧れを抱いている、いわゆる厨二病だ。
こんな中学生の思春期みたいなやつにそそのかされたウサギもウサギだが、なんだか今際の国にカムバックしてしまった理由が残念すぎた…。
原作を読んでいないのでわからないのだが、原作もこんな感じなのだろうか…。
で、このリュウジという男、終始行動や思考が意味不明で、特に酷かったのは最終話である。
色々あって死の渦にウサギを引きずりこもうとするリュウジだが、最後の最後に急に心変わりしてアリスに『共に生きてくれ』とか言ってウサギを託すのである。
心変わりするような伏線も無かったので、リュウジが最後の最後でなんで心変わりしたのかサッパリわからないし、正直もうウサギにもウンザリしてたため『良いよウサギも連れてけよ…』くらいに感じでしまいました(笑)
そもそもなぜリュウジは車椅子になってしまったのかも特に触れられずだし、単なるキャラクターの印象付けくらいの装飾にしか感じられず、車椅子の設定の必要性がまったく感じられなかった。
唯一『おっ』と感じたのは、途中のゲームのレーザーカッターみたいなのを避けるシーンで、車椅子のハンデをモノともしないアクションを見せてくれた事。
まさかあのシーンのために車椅子にしたのかなあ?
悪役2人がただの厨二病(ちゅうにびょう)
今回の悪役の立ち位置としては、前作で死の国の住人となったバンダ(殺人鬼)とヤバ(詐欺師)で、どうやら一目置いているアリスを今際の国に呼び戻したくて仕方がないらしい。
リュウジを使いまずウサギを今際の国に呼び戻し、それを追いかけさせる形でアリスを今際の国にカムバックさせようとする。
まんまとその形になったわけであるが、そもそもなぜバンダがそれほどまでにアリスを今際の国に呼び戻したいのかが良くわからないのである。
呼び戻したらいったい何があるのか。単純に好きなだけなのか。そもそも死の国って普段何をしていて、アリスが来たら何がどう変わるのか。なんにも描かれないのだ。
『いずれ骨のあるやつが大量に必要になる…』的な事をバンダがヤバに語るシーンがあるのだが、その必要になる理由は結局最後まで語られる事はなかった。
なんだろう、どこか他の死の国とでも戦争でもするのかな?
ヴァルキリープロファイルのラグナロク的な…何かがあるのだろうか…?
で、このバンダとヤバが2人で意味深な会話をするシーンが、物語の所々に挟まれるのですが、その会話がもう完全に思春期の中学生の会話なんです。
バンダ『いずれこの国にも骨のあるやつが大量に必要になるからな』
ヤバ『とかなんとか言って、ホントは自分が楽しんでるだけなんじゃないの?』
バンダ『フッ、かもな』
みたいななんかもう全員厨二病かよっツッコミ入れたくなってしまうほどにチープ…。
死の国ってこんな中学生が牛耳ってる国かのかな…って、なんだかもうそうすると死の国がすんごくチープな存在に思えてきて、こんな所に憧れてるリュウジも、旦那の気持ちガン無視で戻ってきちゃったウサギも、そこで必死に頑張るアリスたちも、なんだかすごく滑稽に見えてきてしまうのです。
ゲームが運ゲーばかり
今際の国のアリスと言えば、超高難易度のデスゲームの中で、登場人物の頭脳戦や、アリスの天才的な閃きで難関を突破していく様が大きな魅力でした。
更には『今際の国っていったい何なんだ!?』という未知の世界を冒険していく様、そこでの人間模様などが相まって、シーズン1、シーズン2は素晴らしい作品に仕上がっていました。
長年国内外の映像作品を鑑賞してきた筆者も今際の国のアリスのシーズン1、2を観たときには、『ああ、日本にもこんなにスリリングで引き込まれる映像作品が作れたのか…』と、心からワクワクし、心から嬉しく思ったのを覚えています。
しかし今回のシーズン3は、そもそも肝心要のデスゲームがあまりにも運ゲーすぎました…。
頭脳戦というか、アリスの閃きによってクリアしたゲームって、最初の火矢のやつと、せいぜいゾンビカードのやつくらいでしょうか?
あとはほとんど正直言って初見殺しの運ゲーで、ギャンブル的要素が強いゲーム内容となっておりました。
更にいうと、どちらかと言うと肉弾戦というか、力業で強引にクリアしていくようなゲームばかりでした。
特に電車の毒ガスゲームに関しては、あれは完全に正真正銘の運ゲーですよね?(笑)
何か隠された攻略法とか、気づきによって攻略の糸口を掴める要素はあったんでしょうか?
挙句の果てにはウサギ組は電車ごと移動しちゃうし…。
あれはゲーム開催側としてはオッケーなんでしょうか?
今までだったら全員失格な気がするんですが…。
しかもアリス組がどうやってクリアーしたのかはまったく描かれず。
東京タワー登りも、一切の頭脳戦はなく、ただひたすらに己の肉体と身体能力を信じて登るのみ。たまに意地悪な鉄球が降ってくるから避けてね。みたいなファミコン的ゲームでした。
「もうただのドンキーコングじゃねえかこれ…。」
未来すごろく…大丈夫?
そして最後のゲームである「未来すごろく」。
選んだ方の扉に映し出される映像は、どうやらこの先本当に起きる事になるらしい。
そのためプレイヤーたちは不利な扉だとなんとなくわかっていても、自分のなりたい未来像の方を選んでしまったりするという、なんとも今際の国のアリス的な面白いすごろくだった。
しかし実際は、選んだ方の未来が本当になったのかもわからないし、最後の方はそんな設定あったのかどうかすらあやふやな感じに。
なぜならアリスは、自分が犠牲になる事でみんなを生かすという映像を見て、その通りの選択をして最終的に自分がすごろくの中に残り、他の七人を外に脱出させた。
アリスが見た未来すごろくの映像だと、アリスは頭を今際の国レーザーに撃ちぬかれて死亡するはずだったが、なんとゲームのアナウンスは「あなたは自分を犠牲にして他の人間に未来を託しました。あなたが勝者。残ったあなたはゲームクリアー。こんぐらっちゅれーしょん。」
アリス&筆者「…え?」
多分全世界が「…え?」ってなったはず。
未来すごろくの根底を揺るがすどころか、ゲームのすべてを覆す大どんでん返し。
というかこれだとプレイヤーが四苦八苦して自分の悲惨な未来の映像に惑わされてたのって、何だったんだろう。
これ作った今際の国サイドの住人は、「馬鹿だなあ、未来すごろく全部嘘なのになー。」とか言いながら見てたのでしょうか。
っすがにこれだと何でもありすぎるんじゃないでしょうか…。
新キャラたちに感情移入できない
そしてこれこそが最も今際の国のアリス:シーズン3を残念たらしめた原因なのではないかと筆者は考察しておりますが、今作から登場したいわゆる新キャラたちに、まったくもって感情移入ができないのです。
他の人のレビューだと「新キャラに魅力がない」とよく書かれていましたが、筆者は決してそうではないと思うんです。
新しい登場人物たちに魅力がなかったわけではなくて、描かれ方が良くなかっただけなのではないか…と。
恐らく未来すごろくでの回想シーンに詰め込みたかった制作陣の思惑があったのでしょうが、未来すごろくまで新キャラたちの背景や人物像に触れるシーンがほぼほぼ皆無なのです。
GTOで人気を博した池内博之さん演じる極道のカズヤや、大倉孝二さん演じる薬物中毒だが非常に仲間想いで妙に頼り甲斐のあるテツなど、もっともっと魅力的に描けるキャラはいくらでもいたのである。
だがほとんど人物像が描かれなかったのと、今際の国に来てからのゲーム以外のシーンが描かれなかった事により、多くの視聴者が一切の感情移入ができないまま、無機質に死んでいったのである。
今回もシーズン1、シーズン2と同じくたくさんの登場人物がデスゲームにより惨たらしく死んでいくのだが、「あ、死んだ」くらいにしか思えないというか、「まあ死ぬよね」くらいの残念なリアクションしかとれないのである。
池内博之さんも大倉孝二さんも素晴らしい俳優であり、特に大倉孝二に関しては筆者はかなり好きな俳優さんで、まともに描写がなかったにも関わらず、とてもいい味を出していた。
この描写不足にも関わらず爪痕を残すあたりは、やっぱりさすがだなあ…と感心しましたが、それだけに残念でならないのです。
豪華キャストの無駄遣い感が否めないというか、もっともっと引き出してほしかった…。
比較してはいけないのかもしれないが、同ネットフリックスシリーズである「地面師たち」の役者の使い方が非常に良かったので、今回の今際の国のアリス シーズン3はどうしても疑問が残ってしまうのです…。
余談ですが玉城ティナさん演じるレイが非常に可愛かったのでチョッピリ救われました(笑)
結局なんだったんだ?
さあ色々と書いてきましたが、そろそろまとめに入りたいと思います。
本当はもっともっと書きたい事たくさんあるのですが、そもそもこの記事を誰もみないんじゃないかという一抹の不安がよぎったので、もうここらへんでやめにしたいと思います(笑)
色々と良くない部分を書いてきましたが、見終わった後に一番感じた事は、「結局シーズン3って何だったんだろう?」という事です。
たぶんアリスがウサギを追っかけて今際の国にまた迷い込んでしまうという、不思議の国のアリス的な展開を描きたかったのはわかる。そのために少々強引な展開が必要になってしまったのもわかる。
だがゲームを単なるイカゲーム化させてまで、ウサギを尻軽のメンヘラ女子に変えてまで、悪役2人を中二病化させてまで、やる必要はあったのか?…と。
なんというか、前作までの良い所を完全に台無しにしてしまった感が強くて、非常に後味の悪い作品になってしまっているのです。
正直見終わった直後は、最後の最後に渡辺謙さまが謎すぎる役柄で出てきて、「なるほど一流俳優が出ると意味はわからなくてもこんなにもシーンが引き締まるのか…」と思った事くらいしか残っていないです(笑)
やっぱりこういうデスゲーム系って、いかにプレイヤーたちに感情移入ができるかにかかっていると思いますし、そこを疎かにしてしまっては、どんなにお金をかけて映像を作っても、どんなキャストを使ったとしても、視聴者の心には響かないと思うのです。
そして最大のワクワクである、デスゲームを生き延びた先にいったい何があるのか、という部分も今作ではかなり曖昧になってしまっていたのも大きかったです。
最後までみたら何かあるだろう。と妻と一緒に息子が寝たタイミングの貴重な時間を使って最後まで見きりましたが、「…で?結局本当の死の世界ってなんだったの?」と、モヤモヤしか残らないなんとも無念な気持ちになってしまいました。
あそこまで伏線というか意味深なセリフを散りばめておいて、最後をあんな風に曖昧にするべきではなかったと思いますし、ヤバとバンダの本当の目的くらいは描いても良かったのかなと。
しかもヤバに関しては途中からまったく出てこず、どこいっちまったんだ状態で終っちゃったし…(笑)
カメオ出演レベルですよあれじゃ…(笑)
要するに全部腑に落ちないまま、え?一体何だったの?って感じで終ってしまって、もうウサギが「アリス…ごめん…」って言ったあたりのモヤモヤのまま、最後まで行ってしまった感じで、何を見させられていたのかさっぱりわからない状態なのです。
シーズン1、シーズン2が良かっただけに、正直混乱しています(笑)
なんかスピンオフとかで後日談とか、死の世界について補完してくれる作品でないかな…。
結論:見るべき
で、最後に一応結論として、今際の国のアリス:シーズン3は見るべきかそうじゃないのかという事についてですが、筆者としては言いたい事はたくさんありましたし、残念な点も非常に多かったわけですが、それでも今際の国のアリス:シーズン3は見るべきである。と記載しておきます。
その理由としては、気になる点は無数にありましたが、それでも光る部分もあった事は事実ですし、日本作品でもここまでスケールの大きい作品が撮れるのか…という感想を持ったという意味では、今作のシーズン3もきちんと当てはまるのです。
シーズン1、シーズン2ほどの完成度はありませんでしたが、それでも他の作品に比べればやっぱりグッとくる映像はありましたし、良い部分もあった事は確かなのです。
死の渦は本当に恐ろしかったし、今際の国という場所への興味が依然途切れていない所を考えると、まだシーズン4に期待している自分がどこかにいるのかな…と。



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