第16セクターの人喰いボノボ
第一章:死のセクター
第16セクター。それは、文明の境界線だった。
かつて栄華を誇った都市の外れに位置し、隔離区域として扱われるその地は、政府の管理からも外れ、法が及ばぬ無法地帯と化していた。生き延びるためには、強さと狡猾さが必要とされる場所。だが、その中でも最も恐れられていたのが「人喰いボノボ」の存在だった。
第二章:噂の真相
「人喰いボノボが出たらしいぞ」
酒場の片隅で、男が低い声で呟いた。彼の言葉に、周囲の男たちは沈黙する。
「またか……」
「今度はどこだ?」
「第16セクターの北側、旧工業区だ。昨晩、一つのギャング団が全滅したって話だ」
その場にいた者たちは震え上がった。誰もが知っている。「人喰いボノボ」とは、単なる都市伝説ではない。本当に存在し、そして人を喰らう。
第三章:調査の開始
フリーのジャーナリストである黒崎は、この怪事件に興味を持った。
「こんな話、真相を確かめないわけにはいかないな」
黒崎はカメラを片手に第16セクターへと足を踏み入れる。荒廃した街並み、崩れ落ちたビル、路地裏には死体の腐臭が漂っていた。何者かに貪られた痕跡が、事件の異常性を物語っている。
「これは……まるで獣がやったようだ」
だが、証拠はそれだけではなかった。近くの壁に刻まれた爪痕、そして地面に残された巨大な足跡。それは、人間のものではなかった。
第四章:対峙
黒崎がさらに調査を進めるうちに、突如として影が動いた。茂みの奥から、鋭い眼光が彼を見つめている。
「……!」
そこにいたのは、巨大なボノボだった。
通常のボノボとは異なる、異様なほど発達した筋肉、鋭く尖った歯、そして血に濡れた口元。それは、人の肉を喰らう異形の獣だった。
黒崎は息を飲む。カメラを構えようとした瞬間、ボノボは驚異的な速度で飛びかかってきた——。
つづく
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